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中小企業における人間関係の改善アプローチ

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2024.7.2

中小企業における人間関係の改善アプローチ

■離職率との関係、離職理由における人間関係の位置

厚生労働省の令和4年 雇用動向調査結果の概要によると、「職場の人間関係が好ましくなかった」という離職理由は男性8.1%、女性10.4%という結果が出ています。

この数字は男性で5位、女性で4位にあたります。この数字を大きいと見るか、小さいと見るかですが、選択肢の中にある 「その他の個人的理由」 「その他の理由(出向等を含む)」を除くと、1位は男女共に 「定年・契約期間の満了」、2位が「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」となり、 「職場の人間関係が好ましくなかった」は3位にまで浮上してきます。

■職場におけるストレスの内訳

令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況によると現在の仕事でストレスになっている事柄があると答えた労働者の割合は82%となっています。

主なストレスの内訳は以下のようになっており、対人関係にストレスを感じている労働者は、全体の四分の一を超えていることがわかります。

  1. 仕事の量 (36.3%)
  2. 仕事の失敗・責任の発生等 (35.9%)
  3. 仕事の質 (27.1%)
  4. 対人関係(セクハラ・パワハラを含む)(26.2%)
  5. 会社の将来性 (23.1%)
  6. 顧客、取引先等からのクレーム (21.9%)
  7. 役割・地位の変化等(昇進・昇格、配置転換等)(16.2%)
  8. その他の事柄 (12.5%)
  9. 雇用の安定性 (11.8%)
  10. 事故や災害の体験 (3.6%)

※合計で100%を超えているのは主なストレスを3項目以内で選択する設問形式のため。

出典:厚生労働省 令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

■中小企業特有の課題

経営者目線で人間関係の円滑化を考えた時に、中小企業特有の大きな問題があります。

大企業では人間関係の問題は、異動や組織の変更によって緩和されることがありますが、中小企業は少人数で業務を行っているため異動による解決が難しいという面があります。

そのため社員は、固定されたメンバーでストレスを抱えたまま働き続けなければならならず、離職につながる場合があります。

■希薄化する関係性

最近は人間関係が希薄化していると言われます。

新型コロナウィルスの感染拡大によって、テレワークやオンライン会議を導入する会社が増えたことや、飲み会なども自粛されるようになったことで、社外で社員同士が親睦を深める機会が減ったことも要因でしょう。

社員同士のコミュニケーションはもちろん大切ですが、最近はプライベートを大切にする人も多く、以前のように密な関係を築きたいという要望は少ないようです。

それぞれの価値観を尊重して、程よい距離感を保っていくことが大切になってきます。

■人間関係のマトリックス

「人間関係のマトリックス」とは、人と人が関わった時に発生する感情の力学のことです。

〈人間には4つのタイプがある〉

「人間関係のマトリックス」では、人間のタイプを「ポジティブ自立」、「ネガティブ依存」、「ネガティブ自立」、「ポジティブ依存」の4つに分けて考えます。これは性格を説明するものではなく、自分が行きがちな感情の場所、「感情のポジション」を意味しています。

■ポジティブ自立

  • リーダー、社長タイプ
  • 大きなビジョンを持つ
  • 問題解決志向
  • 楽観的
  • 人間関係が円滑(表面的には)
  • エネルギーに溢れている
  • 人の面倒を見たがる
  • 過去を見たくない
  • 感情から逃げがち

■ネガティブ依存

  • 感じる人
  • 共感能力が高い
  • 有能なカウンセラータイプ
  • 問題を発見するのが得意
  • 芸術的感性を持っている
  • 悲観的
  • 自己憐憫・自己批判が強い
  • 感情にひたりがち
  • 過去にとらわれる

■ネガティブ自立

  • 有能な管理者タイプ
  • チェックが厳しい
  • 参謀タイプ
  • 緻密な仕事をする
  • 完璧主義者
  • 批判的
  • いじめっ子タイプ
  • いつもイライラしている
  • 人をコントロールしがち

■ポジティブ依存

  • なごみキャラ
  • 場を柔らかくする
  • ミスをしがち
  • 無能に見える
  • 頭がすぐ真っ白になる
  • 白昼夢を見がち
  • 人の反応を気にする
  • いじめられっ子タイプ
  • スケープゴートになりがち

出典:ユダヤ人大富豪の教え ふたたびアメリカへ編 本田健

「ネガティブ」や「依存」という言葉からマイナスな印象を受けるかもしれませんが、4つのタイプに優劣はなく、それぞれに良い点と悪い点があります。そして誰もがすべてのタイプの要素を持っています。

「人間関係のマトリックス」において、人は接する相手によって、無意識に4つのポジションのどこかを選択していると言われています。

そして、すべての人間関係は対角にある「ポジティブ自立とネガティブ依存」「ネガティブ自立とポジティブ依存」のどちらかに当てはまるそうです。

〈感情のポジションは相手によって変化する〉

次に、相手によって変化するとはどういうことなのか例を挙げてみます。

例:現場リーダーで優秀だと言われていたAさんが、異動した途端に別人のようにミスを連発するようになった。上司のBさんは𠮟ってばかりいるし、叱られてもAさんにはあまり響いているように見えない。そのせいでBさんは一層イライラしている。

このようなことが起こって不思議に思ったことはないでしょうか。

これは、Aさんは現場にいた時には「ポジティブ自立」のポジションにいて、「ネガティブ自立」の傾向が極端に強い上司Bさんの部下になったことで、ポジションが「ポジティブ依存」に変化してしまった可能性があります。

〈自分の立ち位置を知り「センター」を意識する〉

感情の力学は極端になると、互いに引っ張り合って関係がこじれてしまうと言われています。

関係を改善するには自分の立ち位置を知り、相手との間に中心点、「センター」を見出すようにします。

例えばマトリックスを参考に、相手が「ネガティブ自立」に見えたら自分は「ポジティブ依存」にいることになります。その時は、「この人はどうして過剰に責任を感じてコントロールばかりしようとするんだろう」と考えてみます。相手を理解しようとすることで、相手と自分の間にある「センター」を感じ、「センター」に近づくために自分にできることを探っていきます。

「人間関係のマトリックス」ではお互いの感情が「センターに」近づくほど穏やかな関係になれると言われています。お互いがマトリックスの「センター」を見つける努力をして「歩み寄る」ことを意識しましょう。

■ICTでのアプローチ

昨今は、チャットツールなどを導入して業務効率化を図ることが多いですが、選定する際には人間関係への配慮が必要になります。

既読機能があるものだと、「既読にしてしまったからには早く返信しなければ」と相手にプレッシャーを与える場合があります。

また、「既読スルー」や「未読スルー」のように、開封や返信をしないことで、相手に悪印象を持たれやすいというデメリットもあります。

メッセージを送る側も、内容の重要度や緊急度によってタイトルを変えることや、返信の必要がない場合には「返信不要」であることを伝えるなど工夫をすることで「未読スルー」を避けることができます。

既読機能を使用しないことに不便を感じるようであれば、「確認したものには必ずスタンプ機能を使用して反応をする」など、社内でルールを決めて活用するというのも一つの方法です。

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